日本料理の代表格であり、老若男女から需要の見込める「蕎麦屋(そば屋)の開業」ですが、意外と重要な経営論点がまとまっていない事に困っていませんか?
一口に、蕎麦屋を開業すると言っても「フランチャイズ加盟」「修行からの独立」「蕎麦教室での勉強」など色々な選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
本記事では『これ以上詳しく”蕎麦屋の開業”を論ずるのは難しい』と言えるほど、網羅的に開業論点を取り上げています。
そのため、知りたい情報だけ確認したい方は、気になる見出しをクリックして、効率的に情報をインプットすることをお勧めします。
【記事内で取り上げていることの例】
- 蕎麦屋の開業準備・手順
- 蕎麦屋の開業における失敗例
- 必要な資格・免許・許可
- 初期費用・開業費用
- 開業資金の調達方法
- 年収
- 開業メリット・デメリット
- 蕎麦屋のコンセプト一覧と特徴
- 技術の習得方法・修行方法
- 物件の見つけ方
- よくある蕎麦屋の開業希望者からの質問
蕎麦屋を開業するには、どんな準備が必要?
- 蕎麦屋を開業するには様々な開業準備が必要であり、大まかに挙げるだけでも下記の開業手順を詰めていく必要がある。
この記事では、業界未経験者であっても、蕎麦屋を独立開業するのに必要な知識を網羅的に記載した為、ぜひ、参考にして欲しい。
蕎麦屋の開業手順
- 開業する蕎麦屋のコンセプトを決める。
- どの程度の規模感にするかを決める。
- 出店エリア・物件を探索し、決めていく。
- 店内のレイアウトや、導入する設備を決める。
- 資金調達
- 出店エリア・物件の正式決定
- 店舗設計・見積もり
- 内装・外装業者の決定
- 工事
- 引き渡し
- 設備導入
- 営業許可の取得
- 求人・採用
- メニューの決定
- 仕入れ先の開拓と決定
- 広告宣伝
- 開店
蕎麦屋の開業は難しい?失敗店舗例から学ぶべきこと
値上げの失敗例
- 蕎麦は、作り手の技術もさることながら、実際の出来上がりの大部分は「素材の品質による」と論じられることが多い。
そのため、高品質の材料を、いかに安定的に許容コスト内で調達できるのか、ということが経営論点となる。 - 店舗数を拡大や、フランチャイズへの加盟をすることで、仕入れの力を強めて、低価格での仕入れを安定化させるのは1つの打ち手だ。
- そのような対応ができず、原材料の取引業者との交渉に負けてしまった場合は、高い仕入れ価格を受け入れざるを得なくなる。
そうなると『最終消費者への販売価格を上げる』ことによって、帳尻を合わせるしかなくなる。 - しかし、そもそも蕎麦とは高級店を除けば「大衆的な国民食」という立ち位置のものである。
そのため、いきなり値上げをしてしまうと、集客力が落ちることで、かえって業績を悪化させることにも繋がる。 - 値上げがどうしても必要な場合でも、メニューごとに値上げの上げ幅を小刻みに上げていくことで、客数の変動を分析し、最終的な販売価格を決めるなどの対応が必要である。
物件選定のミス
- 「保有物件を遊ばせておくのが勿体無いので開業する」というのが、よくある失敗パターンである。
自身の立ち上げたいコンセプトの蕎麦屋と、持っている物件の相性が良いとは限らないのだ。 - その他にも「居抜き物件のデメリット」や「スケルトンのデメリット」など、”物件選定のミス”は重要な論点であるため、後述の「物件タイプと、メリット・デメリット」にて、詳細を解説したい。
店舗設計のミス
- 個人で蕎麦屋を立ち上げる場合、店のレイアウトを考える際「いきなり席数を決めてしまい、残ったスペースを厨房にする」というのが、よくある失敗パターンだ。
そうなると、確かに客席の数は確保できるかもしれないが、本来必要な厨房スペースを確保できずに、狭くて動きずらい空間になってしまう。
厨房に必要なスペースがなければ、作業効率が落ちてしまうので、結局は収益性の悪化にも繋がる。 - プロの設計士に頼めば問題ない、と考えるオーナーも多いが、設計士も仕事の幅が広いので、必ずしも厨房の設計経験があるとは限らない。
専門家の力を借りる場合も、人選をしっかりと行った上で、都度レイアウトを確認し、店舗オペレーションに問題が出ないかを直接確認をとる必要がある。 - その点、フランチャイズなどの場合は、あらかじめレイアウトが本部で指定されるため、問題になり辛い。
生産性を無視し、手打ちの製麺にこだわる
- 戦略と競争環境によっては、手打ちが強みになる事もあるが、手打ちのデメリットは「生産性」である。
熟練された職人であっても、人間1人が作ることができる蕎麦の量には限界がある。
そのため、手打ちで生産量を増やそうと思えば、稼働時間を伸ばすしかない。
- 確かに「手打ちの方が、機械打ちよりも美味しい」と評価されることは多い。
しかし料理である以上、当然ながら、作り手の技術力に左右される部分が大きく、必ずしも手打ちの方が常に美味しく作れるわけではない。
そばの品質を安定的にするためにも、機械の導入ニーズは高いのだ。 - 粉の段階から自分で作った蕎麦を顧客に食べてもらい、喜んでもらうことのやりがいは大きいが、商売としての成功のためには、場合によっては割り切らなくてはならない部分もある。
- 実際、こだわりが強そうなイメージの老舗蕎麦屋では、混合機によって一部の業務を機械化しつつ、最後の工程だけ人間の手によって仕上がるという形で「業務の棲み分け」を合理的に行っている。
どうしても、手打ちの工程を残したければ、このように手打ちと機械の活用を考えると良い。
蕎麦屋の開業に必要な資格・免許・許可
営業許可申請 | 保健所から、店舗設備の状況、食品衛生責任者などを勘案した営業許可書の交付を受ける。 |
深夜酒類提供飲食店営業届 | 深夜0時から午前6時までの深夜時簡帯に酒を提供する場合は、地域の警察署・保安係に届出を行う必要がある。 |
食品衛生責任者の資格 | 保健所と連携をしながら、店舗に1人は、食品衛生責任者を置く事が義務付けられている。 資格を取得するには、調理師免許、栄養士・製菓衛生士などは免除される。 資格を持っていない場合は、定期的に開催されている講習会を受講して、受講証明を貰うことが必要だ。 |
初期費用・開業費用
開業費用の事例(15坪程度の小規模店舗)
家賃 | 18万円 |
保証金 | 180万円 |
礼金 | 36万円 |
内装費・外装費 | 700万円 |
設備工事費 | 200万円 |
厨房機器 | 300万円 |
什器・備品費(出前用の自転車含む) | 200万円 |
諸経費 | 15万円 |
合計額 | 1649万円 |
物件取得費
- 事故物件の場合は必要ないが、店舗物件を借りる場合は、一般的に「保証金・敷金・礼金」が必要になる。
設計料
- 設計士に仕事を依頼する場合は、一般的に工事費用の3~8%程度が必要になる。
- 業者によっても異なるが、工事費用の一定レートを請求される以外では、1坪あたりの固定額が請求されるパターンもある。
内装費・外装費
- 内装・外装などの費用に加えて、電気・ガス・水道・空調・排気・厨房などの工事費用もまとめて「工事費」とまとめられるケースも多い。
什器・備品・その他
- 食器・調理機器・事務用品・メニュー表など。
運転資金
- 仕入れ・人件費・家賃・水道光熱費など、毎月かかってくる費用を最低でも3ヶ月、できれば6ヶ月程度用意しておくと良い。
- 当初の想定よりも、開業費用が嵩んでしまい、運転資金を十分に用意できないケースが後を経たないため、余裕を持っておくべきだ。
厨房機器の一覧
- どれも大切な厨房機器であるが、特に蕎麦釜は生産性に大きく影響するため、価格だけではなく、機能も含めて総合的な判断を下すべきだ。
- 手打ちそばを作る場合や、自家製粉を作る際は、また別で道具が複数必要になってくる。
- 利用頻度の高い食器類は、席数の1.5倍程度用意しておくことが一般的である。
蕎麦釜 |
揚げざる・溜めざる・ふりざる |
蕎麦シンク |
角丸シンク |
水切り付きシンク |
脇机 |
食器棚 |
材料棚 |
冷蔵庫 |
コールドテーブル |
ガスコンロ |
物件の考え方
- 「どんな店舗を作るのか」というコンセプトによっても、必要資金は大きく変わるが、いずれにしても必ず決めなくてはならないのが「どんな規模感の店にするのか?」という問いだ。
- 店舗の大きさによっても、客席数・従業員数が大きく変動する。
従業員の数は単に店の大きさによって決めるのではなく、来客数の見込みや、メニューなどを加味しながら、ホール・厨房に、どれくらいの人員が必要なのかを考えるべきだ。
人件費の考え方
「大規模店舗」の場合
- セルフサービスの仕組みの導入するなどの工夫がない限りは、基本的に、店舗の規模が大きくなるほど、従業員の数が必要になる。
- 顧客の注文(受注)に料理の提供(供給)が追いつかなければ、顧客満足度の低下につながる。
反対に、注文数に対して、従業員の数が多すぎると、余分に人件費がかかることになり、収益性を毀損する。
「オーナー1人」で回す小規模店舗の場合
- 1番シンプルな考え方としては「オーナーが1人で店を切り盛りする」というパターンだ。
カウンター席が中心で、テーブル席が1~2卓程度の5坪前後の物件であれば、1人であっても店舗を回すこともできる。 - 品質はやや落ちるが、あらかじめ麺を茹ででおくなどもオペレーションの選択肢にはなる。
「夫婦2人」等で回す小規模店舗の場合
- もう一つよく見られる例としては「夫婦2人等で切り盛りする」というパターンだ。
調理と、ホール業務を分ぎょうかできるため、1人での運営する場合よりは、大きな店舗を運営できる。
10~15坪程度の物件で15~20席程度を設けることができる。 - しかし、昼時などのピークタイムは、もう1人くらいの従業員がいた方が楽になる。
「4~5人」で回す中規模店舗の場合
- 「4~5人」で回す中規模店舗の場合は、25~30坪程度で25~30席程度を回すことができる。
開業資金の調達方法
公的金融機関
- 一般的な民間金融機関は、現在の経営状況・取引実績や、保証人・担保が求められる。
そのため、新しく創業をする際には、なかなか利用が難しく、門前払いなるのが実情だ。
それに対して、政府系の公的金融機関の場合は、融資が受けやすいというメリットがある。 - 公的金融機関には「中小企業金融公庫」「国民生活金融公庫」など様々なものがある。
- 融資の申し込みとしては、各都道府県に支店があり、融資相談窓口があるため、そこで事業の説明を行い、相談をするところから始められる。
意外と、手続きは簡単に進められ、審査は早ければ1ヶ月程度で終わり融資を受けることができる。
公的融資のメリット
- 一般的な民間の金融機関と同じく、担保や保証人が求められるが、公的融資の場合は無担保での融資も多数存在する。
- 担保の評価についても、民間の金融機関よりも高いことがメリットだ。
- 連帯保証人が見つからない場合は、信用保証協会を利用することもできる。
- 民間の金融機関よりも、低い金利で融資を受けることができるのも大きなメリットである。
民間の金融機関から調達をするポイント
- 公的融資よりは難易度が高いものの、高い担保能力や自己資金に加えて、立ち上げる事業に対する経験が豊富である場合は調達ができることがある。
蕎麦屋の原価率
- 飲食業界の原価率は約3割程度とされるが、蕎麦の場合も同様で、原価率が3割程度になるよう、販売単価を調整しているケースが多い。
十割蕎麦の原価は高くなりがちだが、結局は原価率が3割程度に調整されるケースが多い。 - しかし、原価率だけで販売単価を決めるのでは、視点が足りず「競合との比較」も加味するべきだ。
出店エリアにおける相場感が、想定原価率2割であれば、無理に利益率を落とす必要はない。 - 本質的に大切なのは「顧客にとって、適正な販売単価なのか?」ということだ。
そのため、常に商品企画等を行い、販売単価を上げつつ、利益も確保できることが理想である。
蕎麦屋の回転率
- 蕎麦屋と言っても、後述するようにコンセプトが細分化されているため、一概に共通の回転率という者は決まっていない。
- しかし一般的には、立ち食い蕎麦屋の場合は、回転率が高く、10回転する事例もある。
標準的な蕎麦屋にアンケートを取ったところ、1.5~2回転程度との回答が目立った。 - 蕎麦屋の回転率を下げる要因となり得るのが「うどんの提供」だ。
うどんは「茹で時間の長さ」が蕎麦よりも長くなる。
しかも、茹でてから劣化するまでの時間も、そばよりも長いため、ややうどんの注文をする顧客の方が長時間滞在するケースがある。 - そのため、うどんの提供を行う際は、茹でたものを水洗いして、茹で置きにしておき、提供する際に、湯通しすることで、提供速度を上げる、というオペレーションがされる事例が多い。
蕎麦屋の経営って儲かる?年収はどれくらいか
- 儲かっている蕎麦屋の経営者であれば、年収1000万円を超えるケースもありますが、300万円から1000万円越えなど幅が広く、あまり平均値には意味がない。
- あまり平均値に流されず、開業希望エリアにおける競争環境なども加味しながら、事業計画を詰めて、年収の伸び代を算出していく方が建設的である。
- 健康志向の高まりと、国民食であるポテンシャルを考えると、十分高収入が狙える仕事と言える。
蕎麦屋の開業メリット
- 蕎麦屋は、飲食業界の中でも特に歴史が深く、目新しい商売ではないと考えられているが、裏を返せば、それだけ時代問わず常に人気であり続けている飲食カテゴリーなのだ。
老若男女問わず、愛されている料理であるが、そのサッパリとした味わいから、特に年配からの人気も高いため、少子高齢化の日本にとっては、まさにもってこいの商品だ。 - 直近では健康思考の高まりからも、海外を含めて蕎麦のニーズは更に高まっている。
蕎麦はタンパク質を豊富に含んでおりスポーツ愛好家からは「細長いプロテインバー」などと表現されている。
加えて、ビタミンBも多く含んでおり、ルチンという成分によって、毛細血管の働きを安定させる効果もあることが注目されている。
蕎麦屋の開業デメリット
- 蕎麦は、代表的な日本料理という印象とは裏腹に、蕎麦粉の海外輸入比率は非常に高い。
そのため、海外の情勢が変わると、仕入れ値が一気に跳ね上がるリスクを内包している。 - 蕎麦は元来、大衆的な食べ物であり、誰でも気軽に食べることができる伝統的な食べ物だ。
そのため、基本的には高単価ビジネスとして成立させる難易度は高い。 - 蕎麦屋は、大手チェーン店の数も少なく、基本的に小規模事業者ばかりの業界である。
脱サラをして蕎麦屋を始めるオーナーが比較的多く、開業資金が大量には用意できないことも1つの理由だ。 - 職人気質の気難しい接客をする店が多いことが、消費者から受け入れられない理由になることが多い。
逆にいえば、新規参入をする際は、商品の品質だけではなく、接客が差別化のポイントにしやすいということでもある。 - 玄蕎麦で仕入れた場合は、保管方法が課題になりがちである。
粉にすると、劣化が早くなってしまうため、低温倉庫など玄蕎麦を保管する場所が必要となる。
蕎麦屋のコンセプト大全「どんな店を作るのか?」
- 「蕎麦屋(そば屋)」と一言で表現しても、実に様々な業態がある。
厳密に言えば、大手チェーン店でも、1つとして全く同じ店舗は存在しない。
しかし、あまりにも細かく分析をしていくと、終わりが見えないため、まずは蕎麦屋ビジネスの業態を大別し、大きな特徴を把握することが重要だ。
その特徴の中から、開業する際に実現したいことや、自身の強み、現状の実力で動かせる経営資源などを掛け合わせてコンセプトを決めて欲しい。
立ち食い蕎麦屋
- 「立ち食い蕎麦屋」は、駅の構内や、オフィスの近くで出店されているケースが多い。
基本的には、カウンターだけで、立って食べることが前提の店である。 - 元々は個人経営の店舗が多かったが「ゆで太郎のフランチャイズ」や「富士そば」を代表として、大手が急速に拡大をさせたことで定着した業態である。
- 大手チェーン店は、製麺所で作らせた生麺を使うが、自社で工場を作り、オリジナルの麺を店舗に配送することで、品質と、コスト削減を両立しているパターンがある。
ゆで太郎は、挽きたて・打ちたて・茹でたての自家製麺にこだわって提供をしている。 - 立ち食い蕎麦屋は、忙しい社会人が、低価格で、とにかく素早く食事を済ませたいというニーズが強い。
単価が低いが、滞在時間が短いため、大量の顧客を捌くことで、売上・利益規模を担保している。
しかし、客数が見込めるエリアは数が限られているため、大手は資金力やシステムなどを武器に、一気に大量出店を行い、好立地を刈り取る戦略を採用したのだ。 - 「立ち食い蕎麦屋」での独立開業を成功させるためには、客数が見込めるような場所を確保することが重要となる。
ゆで太郎のフランチャイズ(FC)の独立・開業・起業情報を開業資金や収益サポート体制、口コミ・評判まで徹底解説!/株式会社ゆで太郎システム
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十割蕎麦
- 大手の蕎麦屋チェーン店では、大手蕎麦屋では、そば粉比率が50~60%程度となることが多いが、10割にこだわっているのが「十割蕎麦」である。
- 十割蕎麦専門店は、根強いファンがいるが、一方で店舗の供給は少なく、愛好家が店を探すのに苦労しがちである。
- 専門性の高さからも、店舗数が多くないが「十割そば中村麺兵衛のフランチャイズ」などに加盟することで業界未経験者でも、比較的簡単にチャレンジをすることができる。
老舗系蕎麦屋
- 江戸時代の中期には、蕎麦打ちの技術が完成して、蕎麦屋という業態が誕生していた。
その頃の蕎麦の食べ方は、ゆでた蕎麦を、水で洗った後に、熱湯をかけて村して、水気を切って暖かい状態で汁につけて食べるというもので、現在よりは多様性のない食べ方をしていた。 - そのため、蕎麦の歴史は古く、江戸時代から続く老舗が現在も運営を続いている。
老舗系蕎麦屋は、その土地において長く商売をしているだけあり、何代にも渡り通い続けるような固定客の確保に成功している。 - 「老舗」というと、すべての店が手打ちで蕎麦を作っているイメージを持つが、実態としては、老舗系の蕎麦屋でも、手打ちを行っている店は少数になってきており、一部機械を導入することで生産性を上げているケースが多い。
機械が進歩することで、手打ちと変わらない品質の蕎麦を作ることができるようになっており、多くの顧客にサービスを提供できるようになっている。 - 老舗系蕎麦屋の最大の強みは「歴史に裏付けされたブランド力」である。
運営してきた歴史は後発企業に真似をすることが不可能であるため、その絶大なブランド力が競争優位性となっている。 - しかし「レトロ」に魅力を感じる Z世代が増えたことで、後発ながら老舗の雰囲気を演出している蕎麦屋も増えてきており、1つの戦い方となってきている。
総合型和食店
- 蕎麦の専門店ではなく、天丼・カツ丼・うどんなどの和食の中の1つとして、あくまでも「”蕎麦も”扱っている」という店舗だ。
- 和食ニーズに広く応えることができるという意味では、強い業態とも言えるが、ファミリーレストランなどとも競合するため、商品の幅が広いことで、逆に競争相手が増えてしまうリスクもある。
独立系(老舗独立・脱サラ)蕎麦専門店
- 元々、老舗の蕎麦屋等で修行をしていて、自分のブランドで蕎麦屋を開業するケースや、脱サラをして、蕎麦教室に通ってから独立するパターンが多い。
- 老舗の蕎麦屋などのオーナーは、あくまでも経営業務に従事して、そば作りは職人に行ってもらう場合も多い。
それに対して「独立系、蕎麦専門店」では、オーナーが自ら職人として現場に立ち調理を行った上で、ホール業務などは、アルバイト・パートなどにお願いするパターンがよく見られる。 - 開業資金の関係からも、比較的小規模な店舗となり、10~20坪程度で、客席は15~25席程度が中心となる。
- 老舗蕎麦屋や、大手フランチャイズチェーンとの差別化をするためにも、素材にこだわっており、原価が高く、販売単価も高くしている傾向がある。
そば居酒屋
- 「そば居酒屋」と一言で表現しても、細かく分けることができる。
しかし、共通しているのは「夜の売上をいかに拡大できるのか?」という思想である。- 元々蕎麦屋を運営していた店が、居酒屋料理を増やしていき、夜の時間帯の売上を拡大させるパターン。
- 昼は蕎麦屋として運営を行い、夜は「蕎麦屋」は強く訴求せず、あくまでも居酒屋として利用をしてもらい、締めに蕎麦を食べてもらうパターン。
- 蕎麦専門店の場合は、ある意味、そばだけを作れれば良いが「そば居酒屋」として運営をするのであれば、居酒屋メニューも作れるようにならなければいけないため、メニュー開発や、人材育成などが課題となりやすい。
- 「そば専門店」として運営をしている場合は、営業時間も比較的短めで済むことが多いが「そば居酒屋」として運営をするのであれば、営業時間は長くする必要がある。
そのため、深夜の割増賃金なども含めて、従業員の人件費が高くなってしまう。
この人件費の増加を吸収できるほどの、売上を作ることができるのか、という点が経営論点となる。
わんこ蕎麦
- 食べ終わるたびに、お椀に新しい蕎麦が追加される食べ放題の業態である。
- そのエンターテイメント性の高さからも、高い集客力を有しており、外国人観光客などからの人気も強い。
ファミレス型の大規模蕎麦屋
- 郊外を中心に出店している、100坪近い大箱の蕎麦屋業態を指す。
駐車場なども完備しており、主に家族連れを対象としている。 - 個人での開業店もあるが、100坪近い物件での経営となることから、開業費用も1億単位になるケースが少なくないため、法人の新規事業として立ち上がる場合が多い。
手打ち蕎麦屋
- メーカーや工場で大量生産された既製品ではなく、店で一から丁寧に作った「手打ち蕎麦屋」は、効率性だけを考えれば、一見手打ち蕎麦屋は儲かるようには見えない。
- フランチャイズをはじめとして、大量出店が前提となるような業態の場合は、効率化された冷凍そばや、加工済みの生麺を利用する合理性は高い。
消費者からしても、いつでも安心して、どの店でも同じ品質の蕎麦を食べられるからだ。 - ただし、大手フランチャイズと同じように、提供していては、小規模な個人店などは差別化ができない。
そのため「手間暇をかけた手打ち蕎麦を高単価で販売する」ということが、1つの小規模事業者の儲かる勝ちパターンとなっている。
手打ちの方がそばに対するこだわりを感じやすく「美味しい」と評価をしてもらいやすいのだ。 - しかし「手打ち」というだけで、集客が継続的にできるほど、甘い世界ではない。
手打ちだろうが、機械打ちだろうが、常に蕎麦の品質向上に努めることが重要である。
うどんの取り扱いもある蕎麦屋
- 蕎麦屋と打ち出しておきながら、うどんも販売しているのは一般的であるが、一応取り上げておく。
- 蕎麦好きのリピーターであっても、毎回蕎麦を食べていては飽きてしまうので、各種メニューの麺を、蕎麦かうどんで選べるようになっていることが多い。
- 両方も共、同じカテゴリーとして扱われることが多いが、うどんの場合は、製法での相違点があるのに注意が必要だ。
作り方は、似ているが、うどんの場合は「生地を熟成させる」という工程が必要になるのだ。
熟成時間は季節によっても、異なるが、夏は1時間程度で、冬は3時間以上が目安とされている。 - 「寝かす」という工程があることから、小規模な蕎麦屋では自家製麺での、うどんの提供は難しいケースがある。
仕入れ先の確保はどのように行うべきか?
- 一般的に蕎麦粉は、製粉会社からの仕入れとなる。
蕎麦粉は、海外からの輸入比率が高い材料であるが、国内の玄蕎麦は、製粉業者が直接、生産者から仕入れる場合と、農協・問屋などが経由されて、店に届けられるケースが多い。 - 蕎麦の製粉会社は日本全国で多数存在しており、様々な蕎麦粉の種類を取り扱っている。
挽き方や、ロール製粉か石臼粉か選べる業者がほとんどである。
店の要望に合わせて挽き方などを調整してくれる業者も多い。 - サンプルを取り寄せることもできるので、実際の商品を確かめながら、比較検討して決めるべきだ。
- 玄蕎麦から自家製粉する場合は、中間業者を通してではなく、産地に出向き、農協などに相談しながら紹介された農家と契約を結ぶこともできる。
脱サラして蕎麦屋になったオーナーの口コミ・体験談
元々は、メーカーで働くサラリーマンでした。
ですが「いつかお蕎麦屋さんを開きたい」という考えが学生の頃からあったものの、なんだかんだで、就職してから14年が経ってしまっていました。
そんな時に、今では妻となっている当時の彼女が「いま挑戦しないと一生後悔して生きることになるんじゃないかな?」と言ってくれたことがキッカケで退職を踏み切れました。
退職を上司に伝えたところ「脱サラして蕎麦屋を始めたってうまくいくわけない。」と非難されましたが、それでも何度も説得し、辞めさせてもらいました。
退職をしたものの、業界経験がアルバイトを含めてなかったため、まずはネットで情報を探しまくりました。
その結果、複数の選択肢の中で1番現実的だと思えたフランチャイズでの開業を行いました。
知り合いを通じて、何人か蕎麦屋の経営者を紹介をしてもらい職人さんのもとで修行することも考えたのですが、実際に店舗に何度も足を運ぶうちに「そばを作るだけではなく、ビジネスとして、成功をちゃんとしなくてはならない」という思いが強くなりました。
いわゆる老舗のブランドやリピーターがいるわけではない、ゼロからのスタートは、現実的に成功できるとは思えなかったのです。
そのため、フランチャイズに加盟する形で夢を最速でかなえる、という選択肢を取ることになりました。
立ち上がりはなかなか大変で、正直お店を開いてから、半年は毎日不安でいっぱいでしたが、今ではサラリーマン時代の年収を遥かに超える額を稼げるようになりました。
今は、複数店舗の開業に向けて、本部と条件を調整中で、新しい経営者としての成長も見えてきているように感じます。
蕎麦屋になるには、どんな技術を身につける必要がある?
- 製麺済みの素材を使う場合は、あらゆる調理工程を短縮できるが、大手チェーン店との違いを出すために、手打ちでの蕎麦屋開業を目指すオーナーは多い。
そのため、手打ちで蕎麦を作る際に必要な技術を簡単に挙げる。- 水回し
- くくり
- 延し
- 切り出し
- 自家製粉の作業についても、簡単に挙げておくが、必ずしも自家製粉にこだわる必要はない。
こだわり出すと、生産地の候補を作り、生産者との関係性構築をゼロから行い、直接玄蕎麦の確保するなど、膨大な労力が必要になってしまう。
そばの作り方
- そば粉に、つなぎの小麦粉を混ぜる。
- 水を入れて(水回し)、玉状にまとめる(くくり)。
- 丸めたところから、平らに伸ばして(延し)、畳んで包丁で切る(切り出し)。
自家製粉の作業
- 石抜き
- 磨き
- 粒揃え
- 皮剥き
- 石臼
技術の習得方法・修行方法
- 蕎麦屋を開業するための修行 方法は、昔に比べると沢山あるが、代表的なものは下記の3つである。
- ①蕎麦屋の職人に弟子入りして、修行をさせてもらう。
- ②蕎麦屋の開業支援をしているフランチャイズに加盟をする。
- ③蕎麦作りの指導を行っている教室で学ぶ。
- ④独学で学んでいく。
- ただし『弟子入り』か『フランチャイズ加盟』の2つの選択肢を取る人が多い。
- 選択肢の中では、独学での開業が最も難易度が高いと言える。
もちろん教材は世の中にあるものの、センスなど不確定な要素で戦わなくてはならず、一般的にはリスクが大きい選択肢とされている。
蕎麦屋の職人に弟子入りして、修行をさせてもらう。
- 『独立開業する蕎麦屋のコンセプトを固める』
修行をするには、まず最初に「どんな蕎麦屋にしたいのか?」というコンセプトを固める必要がある。
なぜなら、将来「冷凍食品を多用する大衆店」を作りたいのに、「手打ちの本格派高級店」で修行をしても、遠回りになるからだ。 - 『修行先の選定』
- 開業する蕎麦屋のコンセプトを固めたら、次は、それを最短で学べる修行先をリストアップする。
- そのために、飲食店検索サイトや口コミ情報を参考にして、数を絞る。
- 優先順位をつけ、実際に店舗に訪問をして、店の雰囲気や、味などを確認する。
- 『修行の依頼』
- 不義理にならないように「将来そば屋を開業したいので、修行をさせて欲しい」としっかりと伝えた上で修行の依頼をする。
- 修行をする際に、職人の方に受け入れてもらいやすくするためには、共通の紹介者がいるとスムーズである。
しかし、都合よく紹介者がいるケースの方が少ないため、電話や手紙などを活用して丁寧に頼み込んだり、お店の迷惑にならない範囲で、直接店舗に通い詰めることで誠意を伝えるのが良い。 - 店の立場からすると「技術の流出」と「人件費が増える」という最低でも2つのリスクが生まれる提案となる。
そのため、希望する店舗で修行の実現が確実にできる保証はない。
しかし、誠実に依頼をすることで、仮にその店舗で修行ができなくても、知り合いの職人を紹介してくれることもあるため、最後まで諦めずに次に繋がる動きをするべきである。
- 『店への貢献と、技術習得』
- 職場では、最初、あくまでも従業員としての仕事の貢献が求められる。
専門学校などとは違い、体系立てて、手取り足取り教えてもらえるわけではない。
仕事を教えても良いと、判断してもらえるように、まずは店の経営や、教えを乞いたい職人個人に対して、貢献をする必要がある。 - 貢献ができた上で、職人の方の仕事を間近で見学して、練習をさせてもらえるように依頼をしていくべきである。
- 職場では、最初、あくまでも従業員としての仕事の貢献が求められる。
- 『店舗全体の運営ノウハウを学ぶ』
- 「修行」といいうと、蕎麦を作る技術ばかりに目を向けられがちだが、あくまでも蕎麦作りの技術は、経営に必要な一つの要素だ。
- そのため、接客や、従業員のマネジメント、メニュー開発、値付け、広告など、店舗運営に関するすべてをインプットできるように動いていくことが必要だ。
蕎麦屋の開業支援をしているフランチャイズに加盟
- 蕎麦屋に無事、弟子入りをさせてもらえたとしても、修行期間は長期に渡る。
個人の素養や、店舗の受け入れ体制などによって大きく変動するが、一般的には短くても、1年半〜2年程度はかかるし、確実に技術の習得ができる保証はされていない。 - ゼロから蕎麦屋を作る際には、集客力もゼロの段階から、広告費をかけて、徐々にブランド力をつけていく必要がある。
- 一方で、フランチャイズに加盟をすれば、加盟金などは一定かかるものの、技術の習得支援を行ってくれ、必要な準備は一通り支援をしてもらえ、既に先行して集客力のあるブランドを看板に掲げて経営を始めることができる。
- 下記に、蕎麦屋のフランチャイズで代表的なブランドを挙げておく。
ゆで太郎のフランチャイズ(FC)の独立・開業・起業情報を開業資金や収益サポート体制、口コミ・評判まで徹底解説!/株式会社ゆで太郎システム
物件タイプと、メリット・デメリット
- 蕎麦屋を開業する際に最も重要な工程が「物件選び」だ。
物件タイプは大きく4つのタイプがあり、それぞれにメリットとデメリットが存在する。- ①新築の賃貸物件
- ②既存の賃貸物件
- ③オーナーが所有する(又は新規取得)土地に建物を新築
- ④オーナーの自宅を改装
①新築の賃貸物件
- 新築のオフィスやマンションの1階を賃貸するパターン。
建物の大きさによって、入居する店舗数が決まるが、新築のタイミングから入れれば、ある程度の要望が通るケースが多い。
新築の賃貸物件のメリット
- 新築の賃貸物件の場合は、オフィスの従業員や、マンションの住民がリピーターになりやすいというメリットがある。
- 新築の場合、建築中の段階から、近隣からの注目を得られるため、オープンと同時に集客が見込めるメリットもある。
新築の賃貸物件のデメリット
- 物件取得費が、建築済みの既存の建物よりも高くなるケースが多い。
②既存の賃貸物件
- 一般的に、不動産屋から紹介を受ける際は、既存の賃貸物件が中心となる。
既存の賃貸物件のメリット
- しっかりと求める条件に全て一致するケースは多くないが、殆どそのまま店舗として使える物件を「居抜き物件」と呼ばれる。
- 「居抜き物件」の場合は、以前運営をしていた飲食店が残していった、厨房や客席が既にあるため、開業費用を大きく抑えることができる。
- 何もない状態まで戻されている物件は「スケルトン」と呼ばれている。
- 「スケルトン」の場合は、経営者の思い描く通りの理想の内装にすることができるのがメリット。
既存の賃貸物件のデメリット
- 「居抜き物件」の場合、開業費用を抑えるために、残された厨房や客席を利用することになる。
そのため、経営者が思い描く理想の店舗には、できないというデメリットがある。
加えて、再利用ができない部分が多いと、逆に改装費が嵩んでしまうリスクもある。 - 「スケルトン」の場合は、改装費用が居抜きの場合よりも高くなってしまい、内容によっては大家から改装自体を断られるケースもある。
- 以前入居していた業態が飲食系ではなかった場合、電気・ガス・水道の容量を確認する必要がある。
容量が足りない場合は、工事費用がどの程度かかるのかを見積もる必要がある。
③オーナーが所有する(又は新規取得)土地に建物を新築
オーナーが所有する(又は新規取得)土地に建物を新築する場合のメリット
- 賃貸の際に大家から受ける制限などがなく、自由度が1番高い物件パターンである。
オーナーが所有する(又は新規取得)土地に建物を新築する場合のデメリット
- 新しく取得を行う際には、膨大が費用が発生する。
- 自身が保有する物件が、そもそも開業したい蕎麦屋のコンセプトと相性の良い立地である保証がない。
「土地を遊ばせておくのが勿体無い」という発想だけで開業をすると痛い目を見る。
④オーナーの自宅を改装
オーナーの自宅を改装するメリット
- 改築費はかかるものの、蕎麦屋の経営において大きなコストである「家賃」がかからずに開業ができるのがメリットだ。
オーナーの自宅を改装するデメリット
- 自宅があるような住宅地のエリアでは、集客が難しいケースが多く、場合によっては近隣住民からの苦情が来るケースがある。
- 集客力の観点からも、あまり採用されることがない物件パターンである。
物件決定〜開業するまでのスケジュールの詳細
- 物件の決定
不動産屋や、知り合いを通じて、開業する物件の候補をリストアップし、実際に訪問をして、立地調査をする。
そして、納得がいけば、大家と条件面での交渉を行い、賃貸借契約を結ぶ。 - 店舗設計・見積もり
設計士に依頼して、設計の詳細を詰める。
工事は工務店に依頼するか、内装・外装・水道・ガス・電気など、それぞれ別の業者に依頼をする。
いきなり決めずに、複数業者に見積もりを出し、納得をした上で契約を行う。 - 工事
工事期間は、物件や業者のスケジュールによっても、大きく変わる。 - 引き渡し
講師が完了したら、引き渡しをしてもらい、保健所に営業許可を申請して、検査を受けた上で、営業許可書をもらうことになる。 - シュミレーションとプレオープン
工事が終わったら、机や椅子など、備品の配置を行い、調理などの実際の営業シュミレーションを行う。
プレオープンでは数日間におよび、親族や、友人などを招き、実際の営業と同じように、料理を提供して訓練を行う。
蕎麦屋(そば屋)のメニュー例
- メニューは蕎麦屋のコンセプトによっても大きく異なるが、昼の時間帯は、蕎麦を中心としたメニューを扱い、夜の時間帯は、あくまでも蕎麦はシメの一品という立ち位置で、居酒屋メニューを主役にするという考え方もある。
- 参考までに、蕎麦のメニュー例を挙げておく。
- 盛りそば
- 天せいろ
- 鴨せいろ
- とろろ蕎麦
- わかめそば
- コロッケそば
- たぬきそば
- きつねそば
蕎麦の種類
- 蕎麦は、つなぎの割合や、配合によって大きく味が変わる。
出店予定エリアの特性や、オーナーのこだわりによって、決めていくべき重要な論点である。
<代表例>- 二八蕎麦:蕎麦粉8割に、2割の小麦粉
- 十割蕎麦:つなぎ無しで、すべて蕎麦粉
- 粗挽き蕎麦:粗く挽いた蕎麦粉で作る
- 変わり蕎麦:そば粉に色々なものをませて、色や香りを加える
潰れない蕎麦屋の成功の秘訣
蕎麦のコンセプトと、開業エリア・物件との相性
- 飲食業界では「成功の8割は立地で決まる」と論じられることが多い。
しかし『良い立地は、店舗によっても異なる』という前提を忘れてはならない。
高級フレンチと、ファストフード店では最適な立地は違うのだ。 - 「立ち食いそば屋」を開業するのであれば、駅の中・駅前・繁華街などの、人通りが見込める立地の相性が良い。
単価が低いため、大量の顧客を相手にしなければならない。 - 立地の調査を本格的に行うには、ある程度の予算が必要となるため、できる限り起業家が自ら行うべきだ。
- 候補物件をリストアップしたら、直接訪問をして、その地域一体を自分の足を使って歩く。
- 周辺の競合店が、どの程度の数あり、どんなコンセプトで打ち手出しており、何が強みで弱みなのかを口コミ情報も含めて調査する。
- 最寄駅からのアクセス条件も、直接往復することで、確認を取る。
- 通行量を調査するために、曜日や、月などの条件を変えながら、実際に人の数を数える。
- 通行量
- 「高級蕎麦屋」を開業するのであれば、騒がしい駅前や繁華街立地などではなく、少し奥ばった静かな立地の方が良い。
家賃が安く、単価が高いので、少数の顧客でも十分儲かる蕎麦屋を開業できる。
立地調査を行う上で、起業家が行うべきこと
- 立地の調査を本格的に行うには、ある程度の予算が必要となるため、できる限り起業家が自ら行うべきだ。
- 候補物件をリストアップしたら、直接訪問をして、その地域一体を自分の足を使って歩く。
- 周辺の競合店が、どの程度の数あり、どんなコンセプトで打ち手出しており、何が強みで弱みなのかを口コミ情報も含めて調査する。
- 最寄駅からのアクセス条件も、直接往復することで、確認を取る。
- 通行量を調査するために、曜日や、月などの条件を変えながら、実際に人の数を数える。
- 通行量調査の際には、年齢・性別・国籍・職業などの調査も目視で行う。
設計・施工の依頼成功ポイント
- 起業家の状況に応じても、最適なプランは変わってくるため、絶対の回答というものはない。
しかし、自身で設計・施工会社を経営していない限りは、最低限これらの専門業者に依頼をするタイミングがある。 - 建物から、新築で建てる場合は、設計や施工などを、全て専門業者に依頼する必要がある。
既存の物件を利用する場合でも、内装・外装の業者に依頼することになる。 - 専門知識がないと、最後まで自分で進めることはできないが、それでも認識の齟齬を生まないために、オーナーが自らおおまかなデザインやレイアウトの案を作った方がうまくいくケースも多い。
「自分には専門知識がないから・・」と、業者から言われたことを鵜呑みにして進めてしまうと、出来上がりのイメージと異なったり、予算が大幅に上がってしまってもおかしくない。 - 業者に依頼する際は「過去に近しい条件で仕事を手がけたことがあるのか?」「それは具体的にどんな仕上がりだったのか?」という実績面を調べるべきだ。
あまりにも、普段の仕事と違う領域の仕事だと、いかに専門家といえど、初めての経験が多く、完成度が低くなってしまうことが多い。
リピーターの獲得
- 開業直後は、その話題性からも、近隣住民などが1度は来てくれる。
しかし、数ヶ月経ったあたりから、新規集客が難しくなってしまう。 - そのため、集客力が見込みやすい初期段階から、リピート率を上げるための施策を走らせる必要がある。
- 飲食業界には、マーケティングに力を入れていない会社が多いが、開業初期から、サービス(デザート無料など)と引き換えに、LINEやメールマガジンなどの登録をお願いし、定期的に来店を促すべきだ。
- また近年、飲食店を探すのは、Googleマップなどが一般的になっているため、新規集客のためには、Googleマップの評判をよくするべきだ。
しかし、口コミの評価の良し悪しに関わらず、真摯な返答をしていくことで、口コミを行った顧客のリピート率向上に寄与させることもできる。
しかし、対応の仕方を誤るとTwitterなどをはじめとしたSNSでの炎上にも繋がり、廃業に追い込まれるケースもあるため、よく考えた上での返信を心がけることが大切だ。 - 本質的には「また来たい!」と思ってもらえるような商品設計・接客対応をすることが1番であるため、常に改善を行い続ける視点が必要である。
蕎麦屋・うどん屋とラーメン屋どっちが儲かる?
- うどん・そば・ラーメン、いずれにしても原価率は3割程度に設定していることから、コスト構造だけを見れば、どれが1番優れた商材なのか決まっているわけではない。
- ただし、ラーメン屋の場合は、蕎麦屋などに比較すると、爆発的なヒット商品が生まれやすく、大きく儲かる店舗がある。
しかし、蕎麦屋は全国に約1.8万店舗なのに対して、ラーメン屋は約2.5万店舗とされており、競争環境が激しいというデメリットもある。 - 廃業率に関しても、蕎麦屋・うどん屋とラーメン屋では、ラーメン屋の方が高い。
蕎麦屋のビジネス用語
厨房用語
- 蕎麦屋の厨房作業は、店舗コンセプトによっても異なるが、一般的に「蕎麦打ち業務」「釜前作業」「中台作業」に分けられる。
そのため、実際の業務をイメージしながら、効率的なレイアウトに設計をする必要がある。 - 「蕎麦打ち」業務は、開業前の時間に済ませるケースが殆どだが、集客や、顧客の安心感につながることから、ガラス張りにして、人通りに面して設計されていることが多い。
- 「釜前作業」とは、そばを茹でて、水で洗って、盛り付ける作業を指す。
釜前作業は、基本的に、蕎麦釜とシンクで行う。 - 「中台作業」とは、天ぷらを揚げたりする作業を行うこと。
「手打ち」と「機械打ち」の歴史
- そばの作り方は大きく分けて「機械打ち」と「手打ち」の2つがある。
- そばの作り方自体は非常にシンプルであるため機械化による効率化も比較的早く、明治時代には製麺機が発明された。
しかし、それまでは、蕎麦は手打ちで製造されていた。 - 製麺機が発明されたことで、手作業の労力をなくし、いつでも安定した品質で蕎麦を作ることができるようになった。
- 製麺機の発明により、生産性が劇的によくなったが、一方で手打ちの方が味が良いと評価されることが多い。
よくある蕎麦屋(そば屋)開業希望者からの質問
- 蕎麦屋を開業してみたいのですが、飲食業界は未経験です。手打ち蕎麦屋を開くのは無謀でしょうか?
-
いいえ。記事でも詳細を書きましたが、脱サラした業界未経験者の方でも、フランチャイズ・そば学校・職人の元で修行・独学で勉強など、多くの開業方法があります。最短で独立開業を実現させたいならフランチャイズが良い選択肢になります。
- 蕎麦を含め、メニューの価格はどのように決めれば良いのでしょうか?
-
原価から決めるパターンと、競合との比較で決めるパターンがあります。蕎麦屋の原価率は3割程度とされていますが、メニューによっても原価率が変わるため、3割の確保ができるように設定するのが1つ。もう1つは、近隣の競合店舗との比較で、有利になれる設定をすることです。
- 蕎麦屋の営業時間はどうやって決めるべきでしょうか?
-
オーナーの意向によって決めて良いですが、ランチ営業は11時30分から15時くらいまでで、夜は17時から20時くらいまでが一般的な営業時間です。しかし、蕎麦居酒屋として営業する場合は、24時まで営業しているケースも多くあります。休憩時間を設けずに営業する場合もありますが、1人では難しいです。
- お蕎麦の原価はいくらですか?
-
販売価格の3割程度に設定される事が多いです。
- そば屋の客単価はいくらですか?
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コンセプトによっても異なりますが、600~800円の間になる場合が多く、1000円を超える店舗は少ないです。
- そば打ちの修行は何年?
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弟子入りをして修行する場合、短くても、1年半〜2年程度はかかり、確実に技術の習得ができる保証はされていません。そのため、最短で蕎麦屋を開業したい起業家はフランチャイズを選択することも多い。
- そばだけではなく、うどんも取り扱いたいのですが、注意点はありますか?
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詳細は記事で取り上げていますが、特徴の差を理解した上でのオペレーションを組む必要があります。うどんの取り扱いはリピート率の向上などにも寄与しますが「熟成時間の必要性」と「茹で時間の長い」という点が課題となりがちです。
- 蕎麦粉の仕入れ先はどうすればいいのでしょうか?
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記事で詳細を記載していますが、基本的には製粉会社からの仕入れとなります。しかし、自家製粉する場合は、中間業者を通してではなく、産地に出向き、農協などに相談しながら紹介された農家と契約を結ぶこともできます。
- 開業後、数ヶ月で廃れてしまうのではないかと不安です。リピーターの獲得はどうすればいいですか?
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詳細は記事内のこちらで解説しています。新規オープンであれば、最初の顧客獲得は難しくありません。大事なのは3ヶ月目以降のリピーターの獲得ですが、LINEやメールマガジンの活用をすべきです。
- 知り合いの蕎麦屋の経営者から「夜の売り上げが見込めないから諦めた方がよい」とアドバイスをもらったのですが本当にそうなのでしょうか?
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確かに、単純な蕎麦だけを提供する業態だと、夜の売上は限定的です。しかし、記事内でも詳細を取り上げた居酒屋業態の取り込みによって、夜の売上を拡大させることもできます。
※各種情報は調査時点のものです。独自の調査による推測の情報も含まれており、保証されるものではありません。
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